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それは今回ご紹介するSF小説の多くから深く影響を受けたものですが、どんな分野の人にもSFは創造のヒントとなりうるものです。
各サイトの人気ランキングにも入った古典の名作や宇宙を舞台にした海外の壮大なスケールの作品は今も人気を集めています。
読みやすい点でもSFはミステリーにならぶ人気ジャンルであり、ここであげた私のお気に入り作品もどうぞ一度お試しになってください。
ライター:ツバキ
香川県在住。映画や小説が大好きで、文学賞を受賞し1度だけ出版歴あり。現在は「ぐーちょ」で執筆業務を担うなど、Webライターを副業としています。
カメラなどのデジタル機器・デバイスやガジェットに興味があり、「ぐーちょ」で新商品を紹介するときは「すごい、こんなのがあるんだ」と胸を躍らせています。
また50種類以上の植物を育てる自称・園芸家でもあり、植物の記事を書くときもテンションは高めです。
【文学賞作家が選ぶ】初心者でも読みやすい小説15選|高校生から大人まで!
SF小説とは?ここが魅力
SF小説の魅力とは、シンプルに宇宙やパラレルワールドなどの別世界への好奇心を満たしてくれることにあるでしょう。
退屈な日常生活がほんの少しのキッカケで大きく変化するような筋は、読者の没入感を高めます。
また現在進行形の社会や科学の面で深くリンクした設定であれば、未来を予見する洞察力で読者を魅了するでしょう。
SF小説の根本的な魅力は、おそらく今ある現実とは異なる世界を提示することで、新たな世界観や人間観を与える点にあります。
そのため優れたSF小説を読めば、それまで見ていた現実世界がまったく違って見えるようなことが起こります。
近年、SFはカズオ・イシグロなどのノーベル賞作家でも扱うジャンルになっていて、その価値は完全に確立されたと言えるでしょう。
SF小説の選び方
SF小説の選び方を以下の3つのポイントから解説します。
- 物語のアイデアにひかれる作品を選ぶ
- 興味のあるテーマ・ジャンルから選ぶ
- 映画の原作や文学賞受賞作を選ぶ
物語のアイデアにひかれる作品を選ぶ
SF小説はアイデアが命とも言えるジャンルであり、キャッチコピーにもなる物語のアイデアからSF小説を選ぶことができます。
「ミッキー7」は生き死にを繰り返す同じ人間のクローンの話で、「惑星ソラリス」は人の記憶に潜む過去の人をコピーできる海の話です。
こういう小説全体のフックとなるアイデアに食いついたときには大抵、小説を最後まで読めるものなので、この点を大切にしましょう。
興味のあるテーマ・ジャンルから選ぶ
SF小説の選び方として、自分にとって興味や好奇心がわくテーマやジャンルを基準にすることも大切です。
「新世界より」では超能力を操る子供たちのスペクタクル活劇が描かれ、「声の網」では現在の生成AIに通じるテクノロジーの闇がテーマになっています。
SFは他ジャンルよりも読みどころが明確であり、そこに魅かれたり好奇心がわいたりすることがSF小説を選ぶ上で大切な基準になります。
映画の原作や文学賞受賞作を選ぶ
SF小説は映画の原作や権威ある文学賞の受賞作であることが多く、確かな作品性を求める方はこの点を基準に選ぶと良いでしょう。
日本で最も売れたSF小説として知られる「日本沈没」は、映画・TVドラマ・マンガ・Webアニメとさまざまにメディアミックスされています。
「第五の季節」は三部作すべてが最古のSF文学賞と言われる「ヒューゴー賞」を獲得したことで世界中から注目の的です。
こうした高い品質保証があるSF小説は駄作であることが極めて少ないため、名作だけを読みたいという方におすすめの選び方になります。
日本のSFで一番売れた小説は「日本沈没」
日本沈没(上)
作者 | 小松左京 |
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発売日 | 1973年・3月19日 |
出版社 | KADOKAWA |
ページ数 | 348ページ |
「日本沈没」のあらすじ・レビューと評価
日本が海に沈んだら実際どうなるの?
初版から50周年となる2023年時点で490万部、2021年に「日曜劇場」枠のTVドラマにもなり今もなお生き続ける小松左京の代表作。
潜水士・小野寺俊夫と専門家たちは小島が一晩で沈んだ地震を機に、地殻のマントル流の急変による日本列島の沈没を予見。
日本政府も立ち上がり、10カ月以内の沈没の前に全国民を海外に移住させる「D-2」計画を打ち出すというのが大筋です。
この小説の最たる魅力は実際に連鎖地震で日本列島が沈んだらどうなるのかという事をリアリズムに基づいて丁寧に描いている点でしょう。
今では多くの人が知る地震「プレート」もこの小説を機に広まったと言われるほど、さまざまな科学的知見も光っています。
【最新】おすすめのSF小説3選
クララとお日さま
作者 | カズオ・イシグロ |
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発売日 | 2021年・3月 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 385ページ |
「クララとお日さま」のあらすじ・レビューと評価
AIフレンドが見た非情な人間社会
日本生まれで英国育ちのノーベル賞作家、カズオ・イシグロの最新作で2024年以降にハリウッド映画化もされる話題作です。
AFと呼ばれるAIのロボット・フレンド、クララの視点から人間や近未来社会が描かれるのがこの小説のユニークな所。
クララは病弱な少女・ジョジーに献身的に尽くしながら、彼女の家族やカレシや知人を通して人間について深く学習します。
そんなクララのある自己犠牲から奇跡と悲劇が重なり合い、物語は静かな感動と悲しみを伴って終わります。
特に印象深いのは、生前の胎児に施す遺伝子操作・向上処置(リフト)であり、現代の教育格差にも通じるテーマです。
特別なドラマはありませんが、クララにとってお日さまとは何だったのかなど、イシグロらしい文学的余韻を残すSF小説になっています。
ミッキー7
作者 | エドワード・アシュトン |
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発売日 | 2023年・1月24日 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 480ページ |
「ミッキー7」のあらすじ・レビューと評価
何度でもよみがえるクローンたちのコメディ
「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督による映画版が2024年に公開される事でも話題の最新SF小説です。
使い捨てのクローン人間(エクスペンダブル)であるミッキー7はその名の通りミッキーの7人目のクローン。
まさに命がいくつあっても足りない氷の惑星での重労働に当たっているため死ぬたびに肉体を培養され、記憶も新たにコピーされます。
しかしミッキー7が勤務中に奇跡の生還を果たし戻ってくると、ミッキー8がいて大混乱。
2人いることがバレたら処分されるという設定のため7と8が協力して隠そうとするなど、多くのコメディ展開が笑えます。
人間の自己同一性というSFの古典的なテーマなども魅力の1つ。
ちなみに映画版タイトルは「ミッキー17」であり、原作を超えるスケールやお笑い要素が今から期待できます。
残月記
作者 | 小田 雅久仁 |
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発売日 | 2021年・11月18日 |
出版社 | 双葉社 |
ページ数 | 423ページ |
「残月記」のあらすじ・レビューと評価
「月」をモチーフにした3つの異世界
吉川英治文学新人賞と日本SF大賞に輝いた小田雅久仁による「月」をモチーフにした3つの中編小説です。
タイトルの「残月記」は、独裁国家となった近未来の日本で、月昂(げっこう)という感染症に侵された男女の恋愛が描かれています。
満月になると心身ともに昂揚させられる月昂の感染者となった宇野冬芽は隔離されながらも国家の思惑の元で剣士へと変貌。
悪夢のようなディストピアの中でもひときわ輝く冬芽と瑠香のラブストーリーが高く評価されています。
人生の唐突な入れ替わりを描く「そして月がふりかえる」と月に行く夢を見る「月景石」の2編も読みごたえたっぷりです。
【名作】おすすめのSF小説5選
声の網
作者 | 星新一 |
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発売日 | 1970年 |
出版社 | KADOKAWA |
ページ数 | 210ページ |
「声の網」のあらすじ・レビューと評価
生成AIの先にある「無」の時代
ショートショートの名手として知られる星新一による12章の話が1つにつながる連作短編で、まさに隠れた名作です。
近年、注目されるようになったのは、1970年の執筆時に現代の生成AIが起こす悪夢の未来を予言している点にあると言えるでしょう。
連作短編に一貫しているのは聞けば何でも答えてくれる電話であり、その「声の網」のミステリーが読者を最後までひきつけます。
12の短編ではその便利な電話をめぐって、それぞれの主人公が脅迫されたり依存したり反旗を翻したりするさまが描かれています。
個人情報の渦が生成AIによってブキミな集合知となること、過度な情報化時代に起こるフェイクニュースや人間感情の荒廃などなど。
50年以上前に書かれた「声の網」は、この先50年の現代社会が直面する危機まで予見されているようです。
▼関連記事:こちらの記事では星新一のおすすめ小説を紹介しています。
星新一の作品おすすめ人気ランキング【小学生から大人まで】
ソラリス
作者 | スタニスワフ レム |
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発売日 | 初版:1961年/日本語・完全翻訳版:2004年 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 367ページ |
「ソラリス」のあらすじ・レビューと評価
広大な宇宙と溶け合う人の精神世界
アンドレイ・タルコフスキー監督による映画と共にSF作品の金字塔と呼ばれるロシアの巨匠・スタニスワフ・レムの名作小説です。
意思を持つ海におおわれた謎の惑星「ソラリス」の解明のため、心理学者ケルビンはソラリスに派遣されます。
しかしステーションに勤務する研究員たちは「客」と呼ばれる謎の人物に毒されていて、ケルビンも死んだ元妻と再会することに…。
客はソラリスの海が研究員の記憶を元にしてコピーした有機的な人であるものの、やがてケルビンは元妻を真剣に愛するようになります。
宇宙という究極の外部で自らの内面に向き合わされるパラドックスは今も鮮烈な印象を残します。
人の心にこそ宇宙はあるのか、宇宙に行く前に人は内面を知らなくてはならないのか。ソラリスの海は今も多くを語りかけてきます。
華氏451度〔新訳版〕
作者 | レイ・ブラッドベリ |
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発売日 | 1953年10月19日 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 237ページ |
「華氏451度」のあらすじ・レビューと評価
本が禁じられた一見ハッピーなディストピア
初版から今年で70周年を迎えたフィリップ・K・ディックらと並んで評価されるSF界の巨匠レイ・ブラッドベリの代表作です。
テレビやマンガなど感覚に訴える情報しか許されなくなった近未来で、当局のファイアマンが庶民の本を焼くのが日常茶飯事の世界。
本の所有者は逮捕され、相互監視による密告制度がはびこり、そんな中で人は考える力を失ってゆきます。
タイトルの「華氏451度」は紙が自然発火するときの温度であり、作中の独裁国家の目に見えない恐ろしさをみごとに凝縮。
ネトフリなど配信動画が全盛の現代に通じる先見性があり、ファイアマンの主人公の心変わりに胸を打たれるドラマ性もあります。
『完全なる首長竜の日』乾緑郎 (著)
作者 | 乾緑郎 |
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発売日 | 2012/1/13 |
出版社 | 宝島社 |
ページ数 | 313ページ |
- 『このミステリーがすごい大賞』受賞作
- 映画化作品
- 虚実混交ストーリー
完全なる首長竜の日のレビューと評価
終盤に何もかもがひっくり返る
『このミステリーがすごい大賞』の選考委員全員が認めたということで知られるのが本作『完全なる首長竜の日』です。
女性漫画家がSCインターフェースという技術で、自殺未遂後にこん睡状態に陥った弟とコンタクトを取り続けるというのが大筋です。その舞台は現実とも夢ともいえない心の中です。
著者・乾緑郎もいう通り、『ユービック』の影響も受けた驚きの大転換は人間存在や実在することへの深い問いを投げかけます。SFミステリーとして伏線もしっかりしており、ドラマとしても読める味わい深さもあります。
『希望の国のエクソダス』村上龍(著)
作者 | 村上龍 |
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発売日 | 2002/5/10 |
出版社 | 文藝春秋 |
ページ数 | 452ページ |
- オルタナSF
- 中学生たちの反乱
- 不登校児たちのコミュニティ
希望の国のエクソダスのレビューと評価
IT中学生たちの日本脱出
本作『希望の国のエクソダス』も、もう1つの現実を描くオルタナSFです。
21世紀初頭、もし日本の中学の不登校児たち80万人が結束し、ネットビジネスを通じてコミュニティを作っていったらどうなるのかというのが大筋です。
大人たちは子どもの反乱だと騒ぎますが、当の中学生たちは大人は反抗するにも値しない存在だと眼中にさえ入れていません。
日本の構造的な教育・社会問題を浮き彫りにするストーリーは、21世紀をとっくに過ぎた今読んでも痛切に感じられます。
【短編】おすすめのSF小説3選
不思議のひと触れ
作者 | シオドア・スタージョン |
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発売日 | 短編「不思議のひと触れ」・アメリカ:1958年1月/日本:2003年・12月 |
出版社 | 河出書房新社 |
ページ数 | 420ページ |
「不思議のひと触れ」のあらすじ・レビューと評価
不思議のひと触れで平凡な日常が一変する
レイ・ブラッドベリも嫉妬するアメリカSF界の巨匠、シオドア・スタージョンのデビュー作もふくむ傑作短編集ながら日本では絶版の希少作。
人魚らしい女性とのロマンスを詩的に描いた「不思議のひと触れ」、空飛ぶ円盤と話した女性がFBIに追及される「孤独の円盤」。
中でも最も余韻を残すのがアパートの隣人をのぞき見することを日課にした男のホラー系SF「もうひとりののシーモア」です。
そこでは未知の生命体が人類に紛れ込んでいることよりも現代人のある特性の方が異常なものとして描かれています。
このようにスタージョンの魅力の1つはSFにも深い人間洞察を入れる点にあり、本作の多くの短編にはその魅力にあふれています。
ウは宇宙船のウ【新版】
作者 | レイ・ブラッドベリ |
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発売日 | 初版:1962年/1968年・4月18日 |
出版社 | 東京創元社 |
ページ数 | 464ページ |
「ウは宇宙船のウ」のあらすじ・レビューと評価
宇宙への旅立ちは大人への第一歩
シオドア・スタージョンと並んで抒情性も高く評価されるSF作家、レイ・ブラッドベリの自薦による16編の短編集です。
「「ウ」は宇宙船の略号さ」では宇宙船にあこがれていた15歳の賢明な少年がその乗組員に選ばれたことで成年へと成長する物語。
最も印象深い「霜と炎」では不思議な放射能に汚染された惑星の中、わずか8日で成長と老いと死を遂げる人類がモチーフ。
寒暖差の激しさから洞窟で暮らす人には1日わずか30分しか外に出られないものの、遠くに見える宇宙船が希望として残されています。
子供向けの作風ながら、人生の儚さや人類の愚かさが主題のものも多く、大人にこそ刺さる短編集だと言えるでしょう。
『ボッコちゃん』星新一(著)
作者 | 星新一 |
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発売日 | 1971/5/25 |
出版社 | 新潮社; 改版 |
ページ数 | 352ページ |
- ショート・ショート
- 星新一の自薦・代表作
- 50編の短編集
ボッコちゃんのレビューと評価
早く読めて、じっくり考えさせる星新一作品
ショート・ショート、つまり超短い短編SF小説の名手として知られるのが星新一です。中には2~3ページという短編もあるので、小説の初心者にとって最初に手にする本としてはピッタリといえます。
『ボッコ』ちゃんは星新一の短編集の中でも最も人気や評価の高い作品ばかりを50作、星自身が自薦する形で収録したものです。
表題作ボッコちゃんはロボットの女性ウェイターを描いたものです。
ブラックユーモアにあふれたオチには現代社会への風刺も入っています。星作品は早く読めますが、それぞれに深いテーマがあるので深い余韻を味わえます。
【初心者向け】おすすめのSF小説3選
新世界より(上)
作者 | 貴志祐介 |
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発売日 | 2011年・1月14日 |
出版社 | 講談社 |
ページ数 | 382ページ |
「新世界より(上) 」のあらすじ・レビューと評価
千ページを超えて描かれる千年後の壮大活劇
日本SF作家クラブ会員でもある貴志祐介による、アニメにもなった初心者でもグイグイ引き込まれるスペクタクルSF活劇。
人がPK(念動力)を操りその力に服従するバケネズミがいる千年後の世界で、ヒロイン・早季は図書館で禁断の近代史を知ります。
それを機にPKを失った早季と同級生たちはバケネズミや土蜘蛛の抗争に巻き込まれながらも懸命に生きようとします。
全編を通じて描かれるのは大きすぎる力を持った人類の悲劇であり、それは核抑止で世界平和を得た不穏な現代にも通じること。
バケネズミの正体は何なのかといったミステリー要素も加わり、大長編ながら読者を最後まで飽きさせません。
『ヴィーナス・プラスX』シオドア・スタージョン(著)
作者 | シオドア・スタージョン |
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発売日 | 2005/5/1 |
出版社 | 国書刊行会 |
ページ数 | 305ページ |
- 突然、異世界ストーリー
- ノン・ジェンダーの世界
- ユートピアSF
ヴィーナス・プラスXのレビューと評価
男性・女性意識がもたらす現代社会のゆがみ
『ヴィーナス・プラスX』は目覚めるとそこは完全なる別世界だったという、昨今のラノベで大流行の異世界転生ものとも通じ合う作風です。
そこには両性具有のレダム人たちがいて、主人公のチャーリーに人間の目でレダムの文明を評価してほしいと頼みます。男性・女性というジェンダー縛りのないレダム世界は、チャーリーの目にとても魅力的に映ります。
一方、平行して描かれるアメリカ人の日常生活では女の子の赤ちゃんでもビキニを着せられるほどにジェンダーが徹底しています。
ユートピアともいえるレダムの中で、ジェンダーというものがいかに世の中を荒廃させているかが痛切に訴えられます。ストーリーとしても二転三転あり、とても楽しめます。
『時をかける少女』筒井康隆(著)
作者 | 筒井康隆 |
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発売日 | 2006/5/25 |
出版社 | 角川書店; 新装版 |
ページ数 | 238ページ |
- 世代を超えたSF小説の名作
- 世代を超えた映画化、アニメ化作品
- 泣けるラブロマンス短編
時をかける少女のレビューと評価
あの『時をかける少女』の原点がここに
日本のSF小説として『時をかける少女』ほど有名な作品は他にないでしょう。
1980年代に映画化されて以降、21世紀をとっくに超えた今も本作はさまざまな形でメディアミックスされています。その意味で、この小説自体が「時をかける小説」だといえます。
その原作がどういうものなのか、好奇心がわく人は多いはずです。筒井康隆による本作はすぐに読みきれる短編です。
そして、なぜラベンダーの匂いをかぐとタイムリープするのかということなど、根本的な設定がちゃんと書かれています。
超能力というものが元々人間に備わった能力だという逆転の発想は、どれだけ時をへても斬新なアイデアとして輝き続けています。
【玄人向け】おすすめのSF小説3選
第六大陸
作者 | 小川一水 |
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発売日 | 2003年 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 293ページ |
「第六大陸1」のあらすじ・レビューと評価
技術者が「月」でレジャーランド建設に挑戦!
2004年の「星雲賞」にも選ばれた近年の日本のハードSFの代表作で、月を舞台にしながら小川一水らしいノンフィクションの味わいが特徴。
若き建築家・青峰走也が12年の歳月をかけて月に結婚式場を造るというのが大筋で、その詳細な過程が明快に描かれています。
ネットレビューにはNHKの「プロジェクトX」のようだという声もあるほど、実際に月でレジャーランドを造るための技術的な詳細も満載です。
走也とクライアント企業の会長の孫娘・妙との恋愛もはさんだ名コンビぶりも好評で話を引っ張ります。
『果てしなき流れの果に』小松左京(著)
作者 | 小松左京 |
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発売日 | 2018/6/13 |
出版社 | 角川春樹事務所; 新装版 |
ページ数 | 437ページ |
- 壮大な歴史SF
- 日本のSF小説の最高傑作
- 哲学SF
果てしなき流れの果にのレビューと評価
「人類とは何か?」の問いは10億年の時空を超えて
筒井康隆と並んで日本のSF作家を代表する人物としてあげられるのが小松左京です。
そして本作『果てしなき流れの果に』は、長く日本のSF小説の中で最高傑作だと称えられるものです。
十億年単位の時間が流れる壮大なSF大作であり、人類文明とは何かという哲学的なテーマを持っています。一方でラブロマンスもあり、人間ドラマとしても魅力的な作品です。
ハードルは高めですが、でっかいスケールの物語が読みたいという人にはピッタリの本です。
『異史・新生日本軍 朝鮮戦争、参戦!』羅門祐人(著)
作者 | 羅門祐人 |
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発売日 | 2016/12/16 |
出版社 | 経済界 |
ページ数 | 208ページ |
- 架空戦記
- オルタナSF
- 戦争小説
異史・新生日本軍 朝鮮戦争、参戦!のレビューと評価
アメリカの凋落の始まりは朝鮮戦争にあり
SFの中には、もしかしたらこうなっていたかもしれないというもう1つの現実を描くオルタナSFというジャンルがあります。
本作『異史・新生日本軍 朝鮮戦争、参戦!』もその1つであり、架空の戦争を描いた作風から「架空戦記」とも呼ばれます。
第二次世界大戦後、1950年の朝鮮戦争にもし日本軍がアメリカ軍の「在日米軍予備隊」として参戦していればどうなっていたかというのが大筋です。
著者・羅門祐人は、第二次世界大戦以降、アメリカがすべての戦争でちゃんと終結させられなかった理由を本作で探っていると語っています。
架空戦記の中だからこそ、それは信憑性を持つものになるのかもしれません。
【海外】おすすめのSF小説10選
地球の長い午後
作者 | ブライアン W.オールディス |
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発売日 | アメリカ:1962年/日本:2011年・1月14日 |
出版社 | 講談社 |
ページ数 | 382ページ |
「地球の長い午後」のあらすじ・レビューと評価
植物と動物の立場が大逆転!人は月へ飛び立つ
アメリカ最古のSFファンタジー賞「ヒューゴー賞」も獲得したブライアン W.オールディスによる遥か遠い未来のディストピア小説です。
地球の自転が止まったことで昼と夜の世界が分断され、昼の世界で巨大化した植物が地球を支配するというのが大筋。
9才の少年・グレンは部族から追放された後、知性を得たいがためにキノコに寄生され、行動まで支配されるようになります。
一方で月には鳥人と呼ばれる地球から移住した人間が住んでいて、月に行ったグレンは驚きの真相を知ることに…。
環境破壊の現代にも刺さるユーモアや洞察力があり、人類の知性獲得の謎などの知的好奇心も刺激してくれる作品です。
第五の季節〈破壊された地球〉三部作
作者 | N・K・ジェミシン |
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発売日 | 2015年8月4日(アメリカ)2020年6月12日(日本) |
出版社 | 東京創元社 |
ページ数 | 555ページ |
「第五の季節 〈破壊された地球〉三部作」のあらすじ・レビューと評価
天変地異が繰り返される惑星の危機に立ち向かえ!
3部作が3年連続で「ヒューゴー賞」を獲った史上初めての作品として世界的に注目を集めるSFファンタジー。
スティルネスという超大陸がある星で、帝国単体コム(共同体)によって用役カーストと呼ばれる被差別者階級が支配されています。
一方で地面や温度を操って地球と通じ合うオロジェンと呼ばれる排斥種族もいて、破壊的な天変地異「第五の季節」に立ち向かいます。
3部作はそれぞれオロジェンの女性、エッスン・ダマヤ・サイアナイトが主人公となって惑星を救うという壮大なスケールの物語です。
環境危機が深刻な現代において「第五の季節」は切実に感じさせる設定であり、差別・LGBTといった昨今的テーマも盛り込まれています。
『すばらしい新世界』オルダス・ハクスリー(著)
作者 | オルダス・ハクスリー |
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発売日 | 2017/1/7 |
出版社 | 早川書房 新訳版 |
ページ数 | 384ページ |
すばらしい新世界のレビューと評価
未来は便利になればそれでいいの?
本作『すばらしい新世界』は次に紹介する『1984年』と共に、SFディストピア小説の最高傑作とされる小説です。
ディストピアとは楽観的な未来を描くユートピアと真逆のものであり、本作の未来世界もまた暗いものです。機械文明が極まった中、大いなる利便性を手に入れた人々は一見ハッピーに暮らしているように見えます。
しかし社会からも人間の心からもあらゆるネガティブなものが消え去った世界は、どんどん空虚なものになってゆきます。すばらしいストーリー進行で、人生におけるアンビバレンスの価値を訴える傑作小説です。
『1984年』ジョージ・オーウェル(著)
作者 | ジョージ・オーウェル |
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発売日 | 2009/7/18 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 512ページ |
1984年のレビューと評価
ビッグ・ブラザーは今も私たちの前に君臨する
『1984年』というタイトルよりも、ビッグ・ブラザーという言葉の方を聞いたことがあるという人が多いでしょう。
ビッグ・ブラザーとはアメリカを始めとした西欧諸国では横暴な権力者の代名詞として今もよく使われる言葉です。
架空の人物でありながらヒトラーに次いで有名な独裁者だといえます。
『1984年』ではビッグ・ブラザーによる独裁政権が体制維持のために人々を限りなく無知無能にしてゆくさまが描かれています。
これは決して絵空事ではなく、世界は今もビッグ・ブラザーを笑い飛ばすことができません。
公文書改ざんによって歴史を変える主人公の姿を見れば、多くの日本人も決して他人事ではないと思うことでしょう。
『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク(著)
作者 | アーサー C.クラーク |
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発売日 | 1979/4/1 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 390ページ |
幼年期の終わりのレビューと評価
宇宙人が突きつけた人類の幼さ
地球の上空にとてつもなく大きな宇宙船が現れます。それに乗ったオーヴァーロードと呼ばれる宇宙人が一体何のためにやってきたのかという謎が、第一部を引っ張ります。
第二部、第三部に移り、オーヴァーロードが愚かな人類を救うためにやってきたことが明らかになり、さらにオーヴァーマインドというより高次の存在まで現れます。
作品を通じて、未だ人類が「幼年期」にあるという真実が突きつけられます。物質ではなく人間の心の進歩を扱ったSF小説として、『幼年期の終わり』は類希な輝きを放っています。
『シルトの梯子』グレッグ・イーガン(著)
作者 | グレッグ・イーガン |
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発売日 | 2017/12/19 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 505ページ |
シルトの梯子のレビューと評価
時空を巡る人類の内乱
著者のグレッグ・イーガンはハードSF系作家の中でも特にハードだといわれる作家であり、難しい小説が苦手だったりSF初心者だったりする人は敬遠した方がいいでしょう。
『シルトの梯子』の舞台は何と2万年後、新たな時空を生み出せるようになったことで、人類はその時空に生存領域を脅かされるようになり、その譲渡派と防御派によって内部対立を起こすようになります。
この複雑な筋に加え、理数系の知識がハンパなく飛び出してきます。しかし何となく読んでも楽しめるのがイーガンの不思議な作風でもあり、ハードルはそれほど高くありません。
『星を継ぐもの』ジェイムズ・P・ホーガン(著)
作者 | ジェイムズ・P・ホーガン |
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発売日 | 1980/5/23 |
出版社 | 東京創元社 |
ページ数 | 309ページ |
星を継ぐもののレビューと評価
500万年を超えた死体ミステリー
ジェイムズ・P・ホーガンもまたグレッグ・イーガンと共にハードSF作家の第一人者と呼ばれる存在です。
理数系中心のアカデミックな知識が膨大に出てくる作品ですが、SFミステリー仕立てであり読み物としても楽しめます。
月で発見された500万年前の人間の死骸をさまざまな学者が調べるうちに、次々と謎が出てくるという展開は目を引きます。
その意味で根本的には犯罪ミステリーと同じ魅力を持っているといえるでしょう。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック
作者 | フィリップ・K・ディック |
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発売日 | 1977/3/1 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 336ページ |
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?のレビューと評価
アンドロイドを巡る人間ドラマ
フィリップ・K・ディックは、世界のSFファンが選ぶ史上最高のSF作家として有名な人です。
火星で奴隷労働させられていたアンドロイド8人が地球に逃げてきたため、主人公がその8人を狩る賞金稼ぎのハンターになるというのが大筋です。
一見ただのアクション映画のようですが、ディックは人物造形に優れたドラマ作家でもあります。
そのため傑作と評される映画『ブレードランナー』と同じように感動を味わえる作品にもなっています。
『ユービック』フィリップ・K・ディック(著)
作者 | フィリップ・K・ディック |
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発売日 | 1978/10/1 |
出版社 | 早川書房 |
ページ数 | 324ページ |
ユービックのレビューと評価
あらゆる境界は存在しない!?
海外のSFファンにとって本作『ユービック』は、フィリップ・K・ディックの最高傑作であるばかりか史上最高のSF小説としても位置づけられている作品です。
ディックの一貫したテーマは境界を超えることにあり、本作でも生と死、現実と妄想、過去と現在などが隔たりなく融合していきます。
そしてすべてがごちゃ混ぜになった中、1つの真実が浮かび上がります。
今そこにある現実は果たして本当に存在しているのか。ディックの作品は常に読者へそう問いかけてきます。
『われはロボット』アイザック・アシモフ(著)
作者 | アイザック・アシモフ |
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発売日 | 1980/5/23 |
出版社 | 早川書房; 決定版 |
ページ数 | 309ページ |
われはロボットのレビューと評価
ロボットたちの観察日記
ロボットの心理学者が引退するに当たり、これまで出会ったロボットたちを回想するという物語設定がまず目を引きます。
愚かな人間に仕えることに不満を持つロボットなど、さまざまな性格を持つロボットが描かれます。その中で人とロボットの関係はどうあるべきか、またその境界を超えて素晴らしい存在とはどういうものかということを考えさせてくれます。
表紙のロボットのイラストがカワイイので、ジャケ買いで本棚インテリアにしてもいい本です。
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1 レビュー
あまり読書が得意でない人にも若い世代の人にも読みやすい作品だと思います。タイムリープという言葉をこの作品で初めて学びました。時間を超えた複雑なストーリーにも関わらず、分かりやすく書かれているのでこんがらがることもないですし、どのような展開を迎えるのか予想できないわくわく感も楽しむことができました。
この記事を書いたライターからのコメント
今回この記事で多くのSF小説のすばらしいアイデアに触れるにつれ、人間の想像力の果てしなさを思い知らされました。
SFのアイデアとはどれも今ある世界の根本やその大部分を変えようとする大胆な試みであり、そのぶん大きな解放感を得られます。
ユートピアでもディストピアでも、目の前の現実が「絶対ではない」事を知れるだけで気持ちが楽になります。
皆さんもなんか毎日がしんどいなと思うときがあれば、どうぞSF小説という甘くほろ苦い果実に手を伸ばしてみてください。
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『時をかける少女』筒井康隆(著)
あまり読書が得意でない人にも若い世代の人にも読みやすい作品だと思います。タイムリープという言葉をこの作品で初めて学びました。時間を超えた複雑なストーリーにも関わらず、分かりやすく書かれているのでこんがらがることもないですし、どのような展開を迎えるのか予想できないわくわく感も楽しむことができました。