

東野圭吾とは
東野圭吾は1958年生まれ、大阪市出身の小説家です。大阪府立大学の工学部に進学し、アーチェリー部の主将を務めました。作家の多くが文系教育を受けて内向的であることを考えれば、この経歴は異例だと言えるでしょう。
さらに意外な点は、東野圭吾が多くの挫折を経験していることです。2回の落選を経て『江戸川乱歩賞』でデビューするも、28歳から40歳にいたる12年間、ほとんど売れませんでした。その間、文学賞には実に15回も落選していたということです。
東野圭吾といえど、トントン拍子ではなかったのです。彼の成功の最たる秘訣もまた、1つのものに忍耐強くしがみつく執着心だったと言えるでしょう。
東野作品の多くはサスペンス・ミステリーであり、謎解きやスリリングな展開で読者を最後までグイグイ引っ張ってゆきます。
一方で、人間ドラマを軸にした作品も数多くあり、『白夜行』など代表作の多くは読者を深く考えさせる作風だと言えます。
また、東野圭吾は主に3つの人気シリーズを作っています。
加賀恭一郎シリーズでは、刑事、加賀恭一郎が男くさくユニークな捜査を見せ、ガリレオ・シリーズでは、物理学者、湯川学が理系の知識を使って事件ミステリーに挑みます。また、最近映画化もされた『マスカレード・ホテル』はマスカレード・シリーズの第1作目あり、新米刑事、新田浩介が活躍するものです。
東野圭吾作品おすすめ15選
1:仮面山荘殺人事件
- 男女8人、密室殺人
- 謎解きミステリー
- ミステリーの入門小説
仮面山荘殺人事件のレビューと評価
犯人は監禁された8人の中にいる
東野圭吾の入門小説であるばかりか、小説を初めて読む人にもサクサク楽しんで読める作品だと言えます。
フィアンセを事故で失った男が、8人の知人友人と別荘で彼女を慰める会を開きます。そこに逃亡中の銀行強盗が押し入り殺人事件が起こります。が、犯人は8人の中の誰かだということが分かります。
一体誰が何の目的で、悲劇の主人公にさらなる追い討ちをかけるのか。『仮面山荘殺人事件』にはまれば、きっと他の東野作品はもちろん他のミステリー小説にも手を出すようになるでしょう。
2:ナミヤ雑貨店の奇蹟
- 時空を超えるファンタジー
- 感動の人間ドラマ
- お悩み相談
ナミヤ雑貨店の奇蹟のレビューと評価
お悩み相談は、時空を超えて奇跡になる
感動ドラマもまた、東野圭吾の大得意のジャンルだと言えます。特に映画化で話題にもなったこの『ナミヤ雑貨店』は、東野作品の中でも最も泣ける話として有名です。読書初心者にも、スっと入ってゆけるでしょう。
人生に完全に行き詰った3人が逃げ込んだ空き家の雑貨店は、30年のときをへてタイムスリップするお悩み相談が舞い込む場所だった。一見、シュールですが、リアルな設定があるため感情移入しやすいです。
映画を観たあとに読めば、いっそう味わい深いものになるはずです。
3:パラレルワールド・ラブストーリー
- 記憶ミステリー
- 三角関係の男女
- 過去の闇
パラレルワールド・ラブストーリーのレビューと評価
あこがれの女は俺の彼女か、親友の恋人か?
好きだった異性が親友の恋人になったりすると、誰でもうらやましがるものです。『パラレルワールド・ラブストーリー』は、その嫉妬を起点にしており、とても入りやすい物語です。
ある日、目覚めると親友の恋人が自分の彼女になっているということが起こります。スペインの映画『オープンユアアイズ』では、1人の男の彼女が2人の別人になるという展開がありました。
それと同じく、この東野作品でもあいまいな記憶のミスリードが混乱をもたらすことになります。
4:秘密
- 突然の家族の不幸
- 体が入れ替わる母娘
- 女子高生ファンタジー
秘密のレビューと評価
妻に再び訪れたセーラー服の青春
映画『君の名は。』では、高校生の男女の心が入れ替わりましたが、この『秘密』でも母娘の心が入れ替わります。一方が死んでいるという点でも設定が似ており、イマドキの学生さんでも『秘密』の世界観には入って行きやすいのではないでしょうか。
『秘密』というタイトル通り、この入れ替わりにはある理由があり、最終盤にそれが明かされたとき、何ともいえない幸福感を味わえます。広末涼子がヒロインになった映画版も傑作でした。
5:容疑者Xの献身
- 直木賞受賞作
- ガリレオ・シリーズ代表作
- ライバル対決
容疑者Xの献身のレビューと評価
理系最高の知性がぶつかり合う珠玉の犯罪ミステリー
『容疑者Xの献身』は東野作品の中でも1,2を争う傑作として世に広く知られています。物理学者、湯川学が活躍するガリレオ・シリーズの代表作であり、直木賞受賞作としても名高い作品です。
高校の数学教師、石神は情愛を寄せる母娘に代わって完全犯罪を仕組み、大学の同期で捜査一課からガリレオと呼ばれる湯川がそれに挑みます。理系の天才がぶつかり合い、そして決着するさまはとても爽快です。
推理の手がかりがないことから、本格ミステリーではないとの論争を巻き起こした問題作としても知られています。
6:虚ろな十字架
- 死刑反対論
- 家族の二重の悲劇
- 社会派ミステリー
虚ろな十字架のレビューと評価
死刑の賛否を問う二重の悲劇
『虚ろな十字架』は特に若い読者には重い問いかけをする小説です。死刑制度に賛成か反対かを迫るストーリーであり、理想としては廃止、被害者遺族の立場からは存続という矛盾を描いています。
人権や人の命というのは人生の根本的な価値であり、10代のうちにそれを深く考えることは極めて有意義なことであるはずです。魅力的なミステリーと共に精神的な成長をもたらしてくれる作品です。
7:手紙
- 殺人犯の兄と弟
- 犯罪者家族への差別
- 刑務所と世間の対比
手紙のレビューと評価
殺人犯の刑務所暮らしと、その弟の人生
この『手紙』もまた殺人犯に関わるドラマです。世に差別は数あれど、凶悪犯罪者の家族への差別とは最も残酷なものではないでしょうか。『手紙』は、その差別に真っ向から切り込んでゆく作品です。
タイトルの手紙は、刑務所にいる強盗殺人犯の兄から弟に当てられたものです。事件後の2人の兄弟の人生の皮肉な明暗、幸福と不幸の対比が差別の大きさを物語ります。
8:変身
- 脳の移植手術
- 別人になってゆく謎
- 自分を失いかける恐怖
変身のレビューと評価
頭の中にいる他人に自分を乗っ取られる恐怖
ピストルで頭を撃ちぬかれた男が一命を取りとめ、世界初の脳移植手術を受ける男の話です。
彼は元々おとなしい性格だったが、術後にどんどん粗暴になってゆきます。そして最後には秘められた手術の目的が明らかになります。
自分の中にいる他人に振り回されるというのは、カっとなったり、お酒を飲んだりしただけでも起こりうることです。『変身』は、それがいかに怖いものであるかを突きつける作品です。
9:流星の絆
- 孤児になった3兄妹
- 兄妹サギ師
- 殺された両親の仇討ち
流星の絆のレビューと評価
両親を殺された3兄妹のリベンジ・サスペンス
小学生の3兄妹が、両親を惨殺されるという衝撃的な展開から始まる話です。しかし、その後、彼らがサギ師グループになることからも、全体的には娯楽性あふれる筋になっています。
幼少期を孤児として過ごした3兄妹は、その過酷な境遇から「だまされるより、だます」という哲学を持ちます。しかし、そこに恋心という大いなる邪魔が入り、こんがらがってゆきます。
リベンジというものの正当性についても考えさせる作品です。
10:マスカレード・ホテル
- 映画化作品
- 潜入捜査もの
- 犯人は高級ホテルにいる
マスカレード・ホテルのレビューと評価
刑事がホテルに潜入捜査で、美人スタッフから熱烈指導
キムタク主演で映画化された作品でもあり、原作も合わせて読むとより楽しめるはずです。本作『マスカレード・ホテル』は刑事、新田浩介を主役にした東野圭吾のマスカレード・シリーズの第1作目でもあります。
高級ホテルを舞台にして、潜入捜査した新田がそこで起こりうる殺人を食い止めるという筋です。美人スタッフとのやり取りも面白く、多くは富裕な宿泊客の素顔を暴いてゆく展開にも目を引かれます。
11:魔球
- 高校野球
- 高校球児の殺人事件
- 学園ミステリー
魔球のレビューと評価
さわやかな春のセンバツ高校野球の裏側で起こった殺人事件
高校野球を描いた学園推理ミステリーなので、中高生の読者にはピッタリな作品です。東野圭吾がデビュー後まもなく30歳のときに書いた青春小説で、サクっと読めて謎もスッキリと分かる作風になっています。
春のセンバツ高校野球で、魔球を操るエースの捕手を務めていた男が大会後に愛犬と共に殺されます。さわやか極まりない高校野球の世界での殺人というだけで目を引きます。真相は学園内に止まらず、社会の闇にも絡んでおり、大人も楽しめる作品だと言えます。
12:時生(トキオ)
- 不知の病で死にゆく息子
- タイムスリップ
- 家族の泣ける感動作
時生(トキオ)のレビューと評価
瀕死の青年がタイムスリップ親孝行!
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にも似た、タイムスリップで家族の過去をより良く書き換えるというお話です。
『時生』が面白いのは、不知の病に倒れた瀕死の息子が、過去に戻って若い頃の父や母にいろいろと尽くす点にあります。
青春時代に死ぬ宿命の時生が、親のために頑張るという矛盾は、少年の中の無償の愛を引き立てます。泣ける感動作としては、東野圭吾作品の中でも1,2を争うものではないでしょうか。
13:宿命
- 宿命のライバル
- 元カノが同級生の妻に
- 男女の三角関係
宿命のレビューと評価
宿命のライバルと一人の女を巡る嫉妬と愛情の物語
刑事の元カノが刑事の同級生の妻になったというのがこの話の軸になります。同級生は大企業の跡継ぎであり、その社内で次期社長候補の殺人事件が起こります。
そのため、事件に当たる刑事は嫉妬から同級生の犯行を疑い、元カノは再び現れた刑事に惹かれてゆきます。推理ものですが、1人の恵まれた男を通じて2人の男女の心の揺れ動きを描いた人間ドラマでもあります。
14:沈黙のパレード
- ガリレオ・シリーズ最新作
- 帰ってきた湯川学
- 釈放された殺人容疑者
沈黙のパレードのレビューと評価
完全犯罪を突き崩すガリレオふたたび
東野圭吾、最高の人気シリーズ、ガリレオ・シリーズの最新作が本作『沈黙のパレード』です。アメリカに渡った湯川学が、まさかの日本帰国でシリーズが復活します。
少女の殺人事件で無罪となった男が、再び少女殺人で容疑をかけられるが、また無罪釈放になるという話です。そんな男が謎の変死を遂げたことで、事態はさらに複雑に。
無罪になった殺人者へのリベンジ殺人か、あるいは過去2件の少女殺人の真犯人の仕業なのか、物語の結末から目が離せません。
15:白夜行
- 東野圭吾の最高傑作
- 2人の男女の19年に渡る物語
- 迷宮入りした殺人事件
白夜行のレビューと評価
殺人事件の被害者と容疑者の子どもたち、それぞれの人生
『白夜行』は文庫本で860ページにもなる大長編であり、読書慣れしていない若い読者には向いていないでしょう。しかし、東野圭吾の作品を好きになった人には、いつか挑戦してほしい傑作です。
超一級のミステリーでありながら、迷宮入りの殺人事件に関わる男女2人の人間ドラマでもあります。2人の心理描写を一切排したスタイルでありながら、奥深い精神性がテーマとして浮かび上がってきます。
東野圭吾の最高傑作として、長く語り継がれている作品です。