笑えるもの、ほのぼのしたもの、人気シリーズ化したもの、新刊、時代劇としてTVドラマ化されたもの、また『この時代小説がすごい』で一番に選ばれたものまで、数多く紹介します。1冊でも読みたいと思わせる本が見つかるよう、時代小説の魅力について解説してゆきます。
時代小説のおすすめ12選
時代小説のおすすめ12選を紹介します。
1:宮部みゆき『おそろし~三島屋変調百物語』
- 百の怪談
- 少女のトラウマ
- 波瑠主演でドラマ化
おそろし~三島屋変調百物語のレビューと評価
トラウマ少女が、なぜか怪談の良き聞き役に
著者、宮部みゆきは推理、ミステリー、ドラマと幅広いジャンルで才能を発揮しており、時代小説でも傑作を残しています。その代表作が本作『おそろし~三島屋変調百物語』です。
かわいらしい少女のカバー表紙が目を引くこの小説は、波瑠が主演で時代劇のTVドラマにもなっています。凄惨な殺人事件からこころを閉ざしたヒロイン、おちかがなぜか人の怪談の聞き役になります。トラウマを抱えた少女が百のおそろし物語を聞き終えたとき、どうなるのか、とても興味がわきます。
2:畠中恵『しゃばけ』
- 妖怪もの
- ミステリー
- 人情もの
しゃばけのレビューと評価
妖怪たちが悪人たちを切る
著者 畠中恵は、何と漫画家デビューから本作『しゃばけ』で「日本ファンタジーノベル大賞」を獲り、小説家として再デビューした異例の経歴の持ち主です。元漫画家らしく『しゃばけ』は読んでいて絵が浮かびやすいエンタメ小説です。
江戸時代、若旦那と妖怪たちが協力して難事件を解決するという筋で、悪者のはずの妖怪が悪をたたく側にいる皮肉がオモシロいです。
タイトルのしゃばけとは、俗世間の欲望のこと。ミステリーものとしても完成度が高く、シリーズ累計600万部を突破した大人気作です。
3:あさのあつこ『弥勒(みろく)の月』
- 江戸時代ミステリー
- 同心と岡っ引きのバディ
- 魅惑的な女
弥勒の月のレビューと評価
おりんの不審死をめぐるミステリー
弥勒(みろく)とは弥勒菩薩(みろくぼさつ)、つまり仏様であり、人を慈しみ救いを与える存在のことです。『弥勒の月』は、そんな弥勒のような若おかみ、おりんの不審死をめぐるミステリーになっています。
しかし、根本には闇を抱えた男たちのドラマがあり、おりんは死後も弥勒として月のように彼らを照らし続けます。著者、あさのあつこは現代ドラマだけでなく、本作『弥勒の月』で時代小説作家としてみごとな才能を発揮しています。
4:高田郁『八朔の雪―みをつくし料理帖』
- 料理が好き
- 北川景子でドラマ化
- 大阪から上京
八朔の雪―みをつくし料理帖のレビューと評価
美味しい食べ物が世界を救う
本作『八朔の雪―みをつくし料理帖』は、近年、北川景子をヒロインに、時代劇としてTVドラマ化もされた人気作品です。ヒロインの澪(みお)は料理人であり、大阪生まれながら江戸で懸命に働きます。
美味しい食べ物によって人を幸せにするというテーマの軸は、時代小説として画期的であり、そこをとても上手く物語に落とし込んでいます。そう言えば、北川景子も神戸出身であり、澪はまさに適役だったと言えます。
5:宇江佐真理『泣きの銀次』
- 泣きむしの男
- いやす女
- 殺人事件の過去
泣きの銀次のレビューと評価
妹を思って泣き、女中に癒しを求める妙な武士
『泣きの銀次』のタイトル通り、主人公の銀次は泣きむしです。同心(下級武士)に仕えながら、殺された人の死体を見るたびに必ず泣いてしまうのです。
コメディーの色合いが強く、女性作家ならではの男の滑稽さをうまく出しています。しかし、その泣きの背後には惨殺された妹の哀しすぎる思い出があります。
銀次は死体を見て泣いた後、ある女中の元に行って癒しを求めます。凄惨な事件がありながら、そんな男の可愛らしさもたっぷり詰まった感動作です。
6: 畠山 健二『本所おけら長屋』
- 落語のような世界観
- 笑いと人情たっぷり
- 推理もの
本所おけら長屋のレビューと評価
落語のような軽快なお話
本所育ちで演芸の台本などで複数の受賞歴を誇る著者が初挑戦の時代小説です。
江戸っ子気質の長屋住人たちが次々と事件に巻き込まれ大騒動。
人情満載、1話完結型でスムーズに事件が解決していくので読みやすい作品でしょう。笑って泣いて、ほっこりしたい人は是非。
7: 上田秀『密封 奥右筆秘帳』
- この時代小説がすごいNO1作品
- 江戸時代も公文書の改ざん
- ちゃんばらアクション
密封<奥右筆秘帳>のレビューと評価
国が作った公文書に異議あり!
『密封<奥右筆秘帳>』は何と言っても、「この書き下ろし時代小説がすごい!」で1位に選ばれたことがあり、そういう意味で時代小説にかなり慣れ親しんだ玄人向けの作品でしょう。
タイトルの奥右筆とは今でいう高級官僚、国の公文書を扱う立場にあるもの、主人公の立花は公文書決済の責任者です。そんな立花がある不審な死亡届から改ざんを疑い、江戸幕府の闇と対峙することになります。
モリカケ問題に揺れる現代の政治ともリンクする所が多く、共感ポイントが数多くあります。
8: 塚本青史『バシレウス:呂不韋伝』
- 漫画『キングダム』と同じ時代
- 奇跡の中華統一
- 戦乱から平和の時代に
バシレウス:呂不韋伝のレビューと評価
550年の戦乱の時代にピリオドを打ったもの
累計発行部数3,000万部以上で、2020年に映画化もされたばかりの大人気漫画『キングダム』と、本作『バシレウス:呂不韋伝』は同じ、紀元前の中国先史時代を描いたものです。『キングダム』のファンであれば、本作も楽しめること間違いなしでしょう。
紀元前、中国大陸は七カ国に分かれ550年にも渡る春秋戦国時代の中にありました。主人公、呂不韋はそんな戦乱に終止符を打つべく、少年王と共に平和的に天下統一を目指します。
あのでかい中国も、最初はバラバラだった・・・、この史実を知っただけで、今の広大な中国が1つの奇跡だということに気づかされます。
9: 宇月原晴明『安徳天皇漂海記』
- 鎌倉時代の時代小説
- 幼少の天皇のファンタジー
- 国を渡った魂
安徳天皇漂海記のレビューと評価
死んだはずの5才の天皇が、国や時代を超えて駆け回るファンタジー
500年以上前の鎌倉時代、平家が滅亡した壇ノ浦の戦いで若干5才ながら戦死した安徳天皇が、実は生きていた!というサプライズで始まるこの物語。幼少の安徳天皇は鎌倉幕府の三代目将軍、源実朝の前に現れるばかりか、その魂が海を渡って中国、宋の皇帝、マルコポーロの前にまで姿を現します。
まさに時代小説ならではの妄想ファンタジーの極み。幼少の天皇を通じて、三つの大国の王の栄枯盛衰が描かれています。
10: 池波正太郎『真田太平記(一)天魔の夏』
- 忍者一家
- 戦国時代の勝ち組
- 全18巻の大人気シリーズ
真田太平記(一)天魔の夏のレビューと評価
忍者と共に勝ち抜いた戦国時代
著者、池波正太郎は数々の時代小説シリーズを持ちながら、白血病で急逝したため未完作が多いことでも知られます。しかし、この『真田太平記』は全18巻できっちり完結した希少価値のあるシリーズです。
ときは室町時代後期の戦国時代、真田家は巧みな情報収集によって勝ち抜き、江戸幕府が開かれたあとも繁栄を続けます。その手段が忍び、つまり忍者という点が面白いところです。
忍者を立てた戦略とはどういうものなのか、そして江戸幕府とも敵対する真田家は、どうなってゆくのか。とても気になります。
11: 藤沢周平『春秋の檻~獄医立花登手控え』
- 牢獄の医者
- 男女の可笑しな掛け合い
- 未解決事件のミステリー
春秋の檻~獄医立花登手控えのレビューと評価
好きなんだけど嫌味な男女のコメディ
主人公の立花は獄医、つまり牢獄で医者を務めています。立花は人情味あふれる男で、島送りになる囚人から聞いた不可解な事件に共感し、その解決に取り組みます。
世間と牢獄、2つの世界が交錯する中で、この世の本当の姿があぶりだされてゆきます。コメディ要素も多分にあり、立花と居候先の娘、おちえとの掛け合いは今読んでもオモシロいものです。
お互い好きなんだけど、憎まれ口ばかりを言ってしまう男女関係は、ずっと日本のドラマにも引き継がれているものでしょう。名作家、藤沢周平を代表する人気シリーズです。
12: 司馬遼太郎『竜馬がゆく』
- 坂本竜馬の原点
- 日本を代表する時代小説
- 司馬遼太郎の代表作
竜馬がゆくのレビューと評価
レジェンド、坂本竜馬はここから始まった
坂本竜馬と聞いて「知らない」と答える日本人はほぼいないでしょう。それほど有名な竜馬ですが、新時代の改革者というそのイメージは史実よりも、本作『竜馬がゆく』によって作られたものだと言えます。
それほど、この小説の影響力は大きいものでした。シリーズの累計発行部数は2,500万部、TVドラマ化は5回、時代小説という垣根を越えた日本を代表する小説の1つだと言えます。
本作では竜馬を始めとした歴史上の人物が人間くさく描かれており、とても親しみがわきます。たとえ、司馬遼太郎によって多分に虚構化されていたとしても、本作の竜馬は時代を超えた輝きを放っています。